ヴァイオレット・エヴァーガーデン (2018)
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Nobuaki Maruki — 総作画監督
エピソード 5
「愛してる」と自動手記人形
感情を持たない一人の少女がいた。少女は戦うための「道具」として生きていた。名はヴァイオレット。時は流れ戦争は終わり、新たな時代が始まろうとしていた。戦地で傷ついたヴァイレットはベッドの上で目を覚ます。白くなめらかな両腕は、砲弾を受け銀色に輝く義手に替わっていた。彼女に残されたものは、戦場の記憶と上官〈ギルベルト・ブーゲンビリア少佐〉が最後に告げた言葉だけ。だが、その言葉の意味をヴァイオレットは理解できずにいた。そこへ、一人の男が現れる。元陸軍中佐のクラウディア・ホッジンズ。ホッジンズはギルベルトに代わって彼女を迎えに来たと言う。二人が向かうのは南部の港町・ライデンシャフトリヒの首都、ライデン。活気あふれる人々、美しい港の風景、ライデンの街はヴァイオレットを迎え入れる。新しい街でヴァイオレットは「自動手記人形」に出会う。それは、依頼主の気持ちを言葉に代えて手紙に綴る仕事。時には依頼主が胸のうちに秘めた想いさえもすくい取る。ギルベルトがヴァイオレットに残した言葉―――「愛してる」「自動手記人形」になればその意味がわかるかも知れない。――「愛してる」が知りたいのです。――それは、感情を持たず戦うための「道具」として生きてきたヴァイオレットが、初めて示した意志だった。
もっと読む「愛する人は ずっと見守っている」
マグノリア家の屋敷につながる白樺の一本道を、大きなお人形が日傘を差して歩いて来た。冬の初め、屋敷にやって来た自動手記人形、ヴァイオレット・エヴァーガーデン。マグノリア家の一人娘・アンは、好奇心旺盛でお母さんが大好きな女の子。けれど、最近は気分が晴れない。母の体調が芳しくない上に、訪ねて来る客が後を絶たない。一緒におままごとをすることも、本を読むことも、虫を捕まえることもできない。手紙を書くために母が招いたという「お人形」も、きっと私から母を奪う存在に違いない。それから、母はヴァイオレットと二人きりでアンに内緒の手紙を書き始めた。母に近づけないアンの心には、ますます不安が募る。アンは、誰に宛てたものかもわからない手紙を書くより、少しでも自分と一緒にいて欲しいと願う。それが叶わないのなら、「せめて手紙を書いている側でお母さんの手を握らせて欲しい」だって、もう母に残された時間がないことを知っているから……。それすらも許されず、胸が張り裂けそうになるアン。わがままを言って、母を悲しませたいわけではないのに、涙が止まらない。「手紙なんて届かなくていい」と泣きじゃくるアンに、ヴァイオレットは優しく告げる。「届かなくていい手紙なんて、ないのですよ」そう言って、ヴァイオレットはアンをそっと抱きしめた。ヴァイオレットが屋敷を去る日。アンはヴァイオレットのあたたかな頬に小さなキスをした。その時、ヴァイオレットが「お人形」ではなかったと知るアン。ヴァイオレットは、愛らしいアンに優しく微笑みかけた。ヴァイオレットがアンに内緒で代筆した手紙。それは、50年間にわたってアンの誕生日に届く、母からの手紙だった。将来、母が亡き後もアンは手紙によって、母の愛情を受けて育つ。遠く離れたところにいる、母に見守られながら。
もっと読む「 」
大陸の南北をつなぐ大陸縦断鉄道。平和の象徴として完成したこの鉄道を使って、ライデンシャフトリヒとガルダリク帝国が、和平書簡を交わす。C.H郵便社からは条約文書を代筆するカトレアと、その護衛のベネディクトが同行する。和平反対派は鉄道の破壊を目論み、それを阻止するためにディートフリートの部隊が招集された。一方ヴァイオレットは、エイダンの故郷に手紙を届けた帰り道で飛行機から不審な煙を目撃する。それは和平反対派による破壊活動の痕跡だった。良からぬ気配を感じ、機関車の停車場所に降り立ったヴァイオレットは、カトレアたちと遭遇する。この時、すでに車両には敵兵が潜入していた。ディートフリート・ブーゲンビリアは、ヴァイオレットを激しく嫌悪する。「貴様は道具だ。俺が敵を皆殺しにしろと命じたら、平然と殺すんだろう?」しかし、ヴァイオレットは不殺を訴え、ディートフリートが差し出した武器を拒否する。自分の知らないヴァイオレットの姿。ディートフリートは、その変化を認めたくなかった。ヴァイオレットは素手で敵に応戦する。反対派を率いるメルクロフ准将は、ヴァイオレットが「ライデンシャフトリヒの戦闘人形」だと気づき、憎しみを露わにする。次々とヴァイオレットに襲いかかる敵兵。エメラルドのブローチを奪われ、敵に捕らわれてしまう。メルクロフ准将の手中にあるブローチを見つめ、ギルベルトの瞳を思い出す。メルクロフ准将がヴァイオレットにむかってサーベルを振り上げた瞬間、銃を構えた男がサーベルを撃ち落とす。それは、ディートフリートだった。ディートフリートは、ギルベルトを守れなかったヴァイオレットのことを憎んでいた。「お前がギルを殺したんだ。だからお前も死んでしまえ!!」ディートフリートの言葉が胸に突き刺さるヴァイオレット。だが、それでもはっきりと言い返す。「少佐は、それでも生きろとおっしゃったのです」その時、ライフル銃の弾丸が放たれ、ヴァイオレットはディートフリートの前に飛び出した――。
もっと読む自動手記人形と「愛してる」
ヴァイオレットは銃弾からディートフリートを守った。不敵な笑みを浮かべ機関車から飛び降りたメルクロフ准将。その真意に気づいたディートフリートは機関車の緊急停止を試みる。仕掛けられた爆弾の撤去に向かうヴァイオレット。和平反対派の思惑は彼らの手によって阻まれた。そして、ライデンシャフトリヒとガルダリク帝国の和平調印式が行われ、戦争は終わった。ヴァイオレットたちはライデンへ帰り、いつもの仕事に戻る。飛行機で空から手紙を届ける航空祭を前にして、C.H郵便社には代筆の依頼人がひっきりなしに訪れていた。代筆に追われるドールたち。カトレアとホッジンズは、ヴァイオレットにも自分の手紙を書くように勧める。「今のあなたが思う通りに書けばいいのよ、心のままにね」初めて書く自分の手紙―――そこへ、ディートフリートがヴァイオレットを訪ねて来た。連れて行かれたのは、ライデンのブーゲンビリア邸。ヴァイオレットは、そこで初めてギルベルトの母親であるブーゲンビリア夫人と対面する。息子を心から愛している夫人は、ヴァイオレットに語りかける。「あの子は、生きてる。心の中で。だから決して忘れない。思い出す度につらくても、ずっと想って生きていくわ。だって、今も愛しているんだもの」「はい」―――。夫人の言葉に、ヴァイオレットは強くうなずいた。航空祭当日。たくさんの想いがつまった手紙は、空から風に乗って大陸中へ旅立った。ヴァイオレットも手紙を書いて空から飛ばす。「親愛なるギルベルト少佐――」その手紙が届くと信じて――。C.H郵便社に依頼をすれば、大陸のどこへでも彼女はやって来る。水色の日傘を差して、エメラルドのブローチをつけた、義手の自動手記人形が。「お客様がお望みなら、どこでも駆けつけます。自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」
もっと読むきっと"愛"を知る日が来るのだろう
ヴァイオレットが受けた、オペラ歌手からの依頼は恋文の代筆。内容に対する条件の多いイルマは、アリアの歌詞に使える恋文を求めていたのだった。
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